皆さんこんにちは。
馬車の第五輪です。
今日は、先日試験を受けて合格待ちの方々というよりは、1次試験挑戦中もしくは来年の2次試験合格を目指していらっしゃる皆さんに向けたメッセージになります!
先日のある朝、娘が通学前に漢文を一生懸命に朗読しておりました。
(父と違い勉強熱心な娘です)
「朝三暮四」という古事成語で、こんな内容です。
朝三暮四
宋(そう)に狙公(そこう)なる者有り。狙(そ)を愛し、之を養って羣(むれ)を成す。 能(よ)く狙(そ)の意を解し、狙(そ)も亦(また)公の心を得たり。 其の家口(かこう)を損(へら)して、狙(そ)の欲を充(みた)せり。 俄(にわか)にして匱(とぼ)し。将(まさ)に其の食を限らんとす。 衆狙(しゅうそ)の己に馴(な)れざるを恐るるや、 先ず之(これ)を誑(たぶら)かして曰(い)はく、 「若(なんじ)に茅(しょ)を与えんに、朝に三にして暮に四にせん。足らんか」と。 衆狙(しゅうそ)皆起って怒る。俄(にわか)にして曰(い)はく、 「若(なんじ)に茅(しょ)を与えんに、朝に四にして暮に三にせん。足らんか」と。 衆狙(しゅうそ)皆伏して喜ぶ。 (列子) 【口語訳】 宋の国に狙公という人がいた。サルを可愛がって群れをなすほど養っていた。 サルの気持ちを理解することができ、サルも同様に主人の心をつかんでいた。 自分の家族の食べ物を減らしてまで、サルの食欲を充たしていた。 ところが急に貧しくなったので、サルに与える餌の茅(どんぐり)を減らすことにした。 サルたちが自分になつかなくなってしまうのではないかと心配したので、 まずサルたちを誑かして言った。 「お前たちにどんぐりをやるのに、朝は三つで暮は四つにする。足りるか」 するとサルたちは皆起ち上がって怒りだした。そこで狙公は急に言い変えて、、 「それじゃ、朝は四つで暮は三つにしよう。足りるか」と言うと、 サルたちは皆平伏して喜んだ。 |
この古事成語は、一般的には、目先の違いにとらわれて、結局は同じ結果になることに気づかないこと。また、目先の利害を強調して口先で人をあざむくこと。とされています。
つまり、なんだかんだ言って、サルってバカだよねー、という意味だということですね。
しかし、中小企業診断士の1次試験財務・会計、経済学、2次試験事例Ⅳなどを学習された皆さんにお聞きしたいのですが、
朝のどんぐり4つと、暮れのどんぐり4つは同じ価値でしょうか?
そう、等価値になるのは割引率(いわば金利)がゼロの場合のみで、割引率を考慮すると、朝4つ暮3つの方が現在価値が高い、ということになりますね。
どんぐりのNPV計算ができるくらい、サルたちは賢い、、、。
という古事成語だったと考えると、面白いですね。
ちなみにある言説では、最初から朝4暮3を提案せず、あえて朝3暮4を提案してからの「落とし所」へ決着させる手法を含め、双方の知恵の限りを尽くしたかけひきにより両者の協調関係を強化して窮状を乗り切るというゲーム理論の「フォーク定理」の隠喩であるという説明もあり、非常に感心しました。
伊達に2000年以上語り継がれている話ではありませんね。
さて、サルたちにとっての狙公からもらえるどんぐりが極めて重要なものであったのと同じく、我々が大切にしている夢の現在価値はいかほどでしょうか?
多くの受験生にとっては当然ながら、中小企業診断士試験合格というのが当面の夢の一つであることは間違いないと思います。
どんぐりと違って、夢は毎日誰かからもらえるものではありません。
そして次の2次試験は1年近く先です。
診断士試験合格がとても魅力的(長期的利益が極めて大きい)としても、時間割引率がものすごく高い場合、つい目先の惰眠など短期的利益を優先してしまうことは往々にしてあるものです。
診断士試験に挑戦する中でファイナンスや経済学を学ぶものとして、これらの理論を身近に感じることができるのは面白いですね。
では、どうすれば時間割引率を下げることができるのでしょうか?
それはやはり、1年後の合格・試験をいかに明確に具体的にイメージするか、今日の勉強が合格に直結していることを意識できるか、ということが重要だと思います。
合格後、診断士になってやりたいことを考えることを習慣化しましょう。
試験まであと何日かいつでも即座に言えるようにするのも効果的かもしれません。
そして現実的には、利益よりもリスクを考えることの方が割引率が下がる傾向があるようです。一見ネガティブかもしれませんが、合格することよりも不合格を回避することを考える、ということも有効かもしれません。
明日試験だったら?と考えると、今日惰眠を貪るのは憚られますよね。
試験中の自分を助けられるのは今の自分だけです。
ヒッチハイクをしている僕を迎えに行こう
参考文献:「朝三暮四の政治算術」 細野助博 公共選択の研究 第31号
「自滅する選択」 池田新介 東洋経済新報社
「未来」 作詞 桜井和寿