みなさんこんにちは。
2023年、明けましておめでとうございます。
期せずして新年の投稿になりました。
僕自身、昨年は9年越しの悲願の診断士合格を果たし、環境が大きく変わった1年になりました。
このブログに投稿する機会をいただいたのものその1つです。ブロガー経験など人生初のことでした。
年頭の投稿にあたり、せっかくなので昨年1年の自分の記事を振り返ってみました。
拙い文章にもかかわらず、多くの方に読んでいただき本当にありがとうございます。皆様に心から感謝です。
これまでほぼ毎月、11回にわたって自由気ままに記事を投稿させていただいてきましたが、viewの数が最も多かったのが、
「与件文を読んでも何の話かわからない?独学『論理』放談」364ビューでした。
(次点は、「11月の残心」320ビューでした。)
タイトルから、与件文なんて読んではいけないよ、というような趣旨のトンデモ釣りコピーのように思われてしまったのではないか??という一抹の不安もありますが、そこは大好評だった、とあえてポジティブに捉え、今日はその続編を綴ってみたいと思います。
映画の世界では「続編に名作なし」と冷ややかに言われることが多いようですが、「ダイハード」「ターミネーター」「エイリアン」「ゴッドファーザー」と例外も多いですので、そうなることを願って書いてみたいと思います。
論理とはわけて、つなぐこと
診断士の学習をする中で、「1段レベルが上がったかも」と実感できたのがこの「論理とはわけて、つなぐこと」という考えを自分なりに内面化できたことでした。
前回は紙面の関係で省略してしまいましたので、難航することを覚悟で今回はこの説明をトライしてみたいと思います。
こと「論理」という側面から捉えると、診断士の試験で問われているのは突き詰めれば「どういうことか」「なぜか」の2種類に限定されます。
そして「どういうことか」を考えるにあたっては、「命題論理」の考え方が非常に役に立ちます。
命題論理を考察するためのフレームワーク(1)「否定」
「否定」とは、全体におけるある集合(A)以外の部分(Aでない:補集合)を指摘する言葉です。
例えば全体の集合を「天気」だとして、特定の集合Aを「雨」とします。するとAの補集合(Aでない)には、「晴れ」「曇り」「雪」などが含まれることになります。この否定の考え方が使えることで、天気の全体像がもれなく網羅されることになります。つまり「何が何であろうと明日は雨か、雨でない」ということです。
命題論理を考察するためのフレームワーク(2)「連言」
「連言」とは、一言で言ってしまえば「AかつB」のことです。
そして、それだけで思考を止めず「AかつB」に相当することばを「Aという主張も、Bという主張も両方ともの正しい場合」と拡大して考えていくと、
①「AかつB」
②「Aまた、そして、さらに、そのうえ、加えて B」 ③「Aしかし、だが、ところが、けれども、一方、他方B」 ④「Aだけでなく、のみならずBも」 ⑤「Aと(や)B」 ⑥「Aでありつつ、ながら、と同時に、ともにB」 |
いやいや③とか逆接でしょ?という方も多いと思いますが、AとBが両方主張されているので、論理的には「かつ」とみなします。
ベン図でみるといずれも以下のようになります。
事例での実践例
これらの考え方を診断士試験に当てはめるとどのように使えるでしょうか?
ここで、実際の事例をもとに考えてみたいと思います。
令和3年度 事例Ⅰ 第1問
「2代目経営者は、なぜ印刷工場を持たないファブレス化を行ったと考えられるか、100字以内で述べよ」
本文はなぜか?に答える必要がある問題ということになります。
そもそも、2代目経営者がファブレス化戦略を採用することに「なぜ?」という問いが立てられるのは、そこに「飛躍」があるからです。
2代目経営者がA社をファブレス化することで、(生き残ることに)成功した。
A → X
A→X(AならばX)に飛躍があるのであれば、その飛躍を埋める説明(=「論証」)をする必要があります。
通常「論証」は、「Aの説明」をすることによって行います。(すべての企業の究極的な目的(前提)が生き残ること、ゴーイングコンサーンであるとすればここに議論の余地はないものと考えることができます)
では「Aの説明」を考えてみましょう。
まず、「ファブレス化」の説明です。
「ファブレス化」とは「どういうことか?」を考えればいいわけです。
設問文にあるように、「ファブレス化」=「工場を持たない化」ということになります。
なんだ超簡単、となりそうですがここでの思考停止は禁物です。
「工場を持たない化」とは「どういうことか?」
1次試験を突破してきた方なら、「工場を持たないことで、経営資源を自社の強みに集中でき、市場の変化に柔軟に対応することができる」というファブレス化戦略の特徴がすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。
そしてここで「否定のフレームワーク」を使います。
ファブレス化の特徴を全体の集合として、「経営資源を強みに集中でき、市場の変化に柔軟い対応することができる」という特徴を特定の集合(A)とすると、その補集合(Aでない)は何になるでしょうか?
集合(A)をメリット的側面の集合と捉えると、Aでない集合は、デメリット的側面の集合となるはずです。
1次試験を突破してきた方なら、ファブレス化戦略のデメリットを答えよ、という問題が出題されれば、「外注コストがかさみ、安定した品質管理がしづらい」といった解答をするのは朝飯前だと思います。
そしてここで、「連言のフレームワーク」の出番です。
ここまで考察してきた特徴を「連言」として考えると、
ファブレス化とは、「経営資源を強みに集中でき、市場の変化に柔軟に対応することができる」かつ「外注コストがかさみ、安定した品質管理がしづらい」となります。
ベン図で考えると次のイメージです。
どうでしょう、ファブレス化を「わけて」考えるというイメージがしっくりきませんか?
ところで今、ファブレス化の説明ができたところで、まだ「飛躍」は埋まっていません。
ファブレス化にはメリットもデメリットもあるのに、A社があえてその戦略を採用する根拠が示せていないからです。
繰り返しになりますがファブレス化がすべての企業にとってプラスならば、ファブレス化しない企業は皆無であるはずなのに、現実にはそうなっていないことを意識しましょう。
この飛躍を埋めるためには、戦略の主体であるA社の説明をしなければなりません。A社の説明、具体的にはA社を取り巻く環境の説明です。
A社を取り巻く環境を全体の集合として、与件に示されている外部環境(技術革新に伴う既存ビジネスの付加価値低下、単価ダウン)をAとすると、その補集合(Aでない)は何になるでしょう?
外部環境でない環境といえば、言わずもがな内部環境ですよね。与件から内部環境としては、「印刷に関する専門的な技能・技術、歴史的に構築してきた分業体制」があげられると思います。
これを連言を意識して考えると、
A社(を取り巻く環境)とは、「技術革新に伴う既存ビジネスの付加価値低下、単価ダウンという外部環境下にいる」かつ「印刷に関する専門的な技能・技術をもち歴史的に構築してきた分業体制をもつ」と説明できます。
A社(を取り巻く環境)を「わけて」考えています。
そして、それぞれの説明を「つなぐ」必要があります。
技術革新を伴う環境変化に、ファブレス化による強み特化・変化への柔軟性で対応できる→生き残れる
専門的な技能・技術や歴史的に構築してきた分業体制があるため、外注コスト抑制、高い品質の維持が可能→生き残れる
このように具体的なそれぞれの説明をつなぐことで、冒頭の「飛躍」を埋めることができた、と考えます。
注1:技術が拙劣すぎてビジュアライズできませんでしたが、上記2つのベン図を縦に並べてつなげている様子を脳内補完してください。
注2:あくまでも個人が学んできた論理を意識した考え方の紹介を趣旨としていますので、模範解答とは限らない、と言わせてください。
いかがでしょうか?
自分なりに学んできた「論理」を診断士試験にぶつけてみた一例をご紹介してみました。
興味のある方は私が読んできた論理に関する参考文献をあげておきますので、隘路にハマり非常に遠回りになるリスクは十分ご勘案の上、是非手にとってみてください。
【参考文献】
・東大現代文でロジカルシンキングを鍛える 柳生好之 KADOKAWA(←今回の記事のベース本)
・論理トレーニング101題 野矢茂樹 産業図書
・大人のための国語ゼミ 野矢茂樹 山川出版社
・ロジカル・シンキング論理的な思考と構成のスキル 照屋華子、岡田恵子 東洋経済新聞社
・ロジカル・ライティング論理的にわかりやすく書くスキル 照屋華子 東洋経済新聞社
・文章は接続詞で決まる 石黒圭 光文社