1.自己紹介
はじめまして。令和4年度二次試験合格者の「富田(とみた)」と申します。これから1年間、毎月第2週目の水曜日に投稿します。よろしくお願いします。
簡単に自己紹介をしますと、私は診断士試験の合格に12年を費やし、一次試験を12年連続、二次試験を8年連続で受験した、いわゆる多年度生です。合格まで長い年月を要しましたが、不肖ながら、受験生時代に得た知識やノウハウを、これから一年かけて、受験生の皆さんに少しずつお伝えできればと思います。
このブログをお読みの受験生の皆さんの、令和5年度の一次試験と二次試験の合格をお祈りします。ストレート生は「ストレート合格」を、その他の受験生は「少年度合格」を切に願います。いい意味で私を「踏み台」にしてもらえれば本望ですし、ブログ執筆者冥利に尽きます。(ブログ読者の皆さんの合格のためなら、労を惜しみません。)
2.因果関係とは?
本日は1回目の投稿ですので、汎用的かつ分かりやすいテーマにしたいと思います。今回のテーマは、二次試験に関連して、「因果関係を意識する」ことです。多くの受験生の皆さんは、一次試験の学習と並行して、二次試験の学習もされていると思います。二次試験の事例Ⅰ~Ⅳのうち、特に事例Ⅰ~Ⅲについては、私の体験から、因果関係を意識した解答を書く必要があると思います。シンプルなテーマですが、普遍的なテーマでもあり、その意義はきわめて重要です。
ご存知の方も多いと思いますが、因果関係の定義はこちら。
なるほど。定義自体はいたってシンプルですね。しかし、いざ本試験で解答する段になると、何を当てはめてよいのやら、何かと苦労しそうです。
因果関係を意識した解答技法は、一朝一夕にマスターできるものではありません。まだ二次試験まで半年ほどあり、比較的時間に余裕のあるこの時期から、時間をかけてじっくりと腰を据えて取り組み、腹落ちさせて自分のものにしてほしいです。
因果関係を意識することの重要性について、これから順を追って説明します。(不合格の年は、自らの実力不足から、因果関係を意識した解答が書けませんでした。)
3.過去問で検証してみよう!
令和4年度の事例Ⅰを例にとって説明します。過去問対策として学習された方もいると思いますが、A社は、後継者への世代交代を検討し始め、今後も地域に根ざした農業を基盤に据えつつ、新たな分野に挑戦したいと考えている農業法人の事例でしたね。
ここでは、5問ある設問のうち、第1問を例にとって説明します。
分かりやすくするために、<解答例A>と<解答例B>の2つの解答を例示し、それらを比較対照しながら説明します。(解答例作成は筆者。)
※この解答例以外にも、各予備校からさまざまな模範解答が公表されています。今回は、解答内容に重きを置いているのではなく、これから説明する「因果関係」に重点を置いていることを予めご了承ください。
いかがでしょうか。分かりやすく説明するために、あえて<解答例A>は因果関係を意識せず、かつ主に有形資源を強みに挙げています。しかしながら、解答に盛り込むキーワードの如何によっては、<解答例A>でもある程度の点数は入ってくると思われます。
これに対して、<解答例B>は、因果関係を意識して解答を組み立てているのがお分かりいただけるでしょうか。この設問は事例Ⅰには珍しく、ストレートに強みと弱みを問うています。(事例Ⅱや事例Ⅲではよく出題されがち。)強みの源泉から培ってきた強みと、かつその強みがA社独自のもので無形資源であるがゆえに模倣困難性も高いです。需要が高まっている、顧客ニーズが顕在化した機会や、潜在的な顧客ニーズのある機会に対して、強みが今後のA社が描く成長戦略に活用・維持・強化できる余地のあることを示唆して、採点者にアピールしています。
また、弱みについても、事例Ⅲのように、第2問以降において、弱みの原因である問題点に対応策を打てば、芋づる式に問題が解決され、課題を達成できるような書きぶりになっています。(主述の関係でいえば、問題は解決し、課題は達成する。)
比較検討のために、①、②、③などと、あえて通し番号を付していますが、別になくてもよいと思います。(口酸っぱく言いますが、大事なのは因果関係です。)特に、<解答例B>では、強みと弱みのそれぞれで因果関係が繋がっていることがお分かりいただけると思います。
受験予備校の模試や答練と違い、本試験ではある程度幅広く加点されると思われますが、それでも協会が用意している正解は、おそらく因果で繋がれた文章だと推察します。
4.問題の難易度の見極めや、解く順番も注意!
なおかつ、令和4年度事例Ⅰの第1問のような、いわゆる「強み・弱み」を問う問題は、与件文に解答やその根拠といったヒントが明示されていることが多く、難易度的にもあまり高くありません。ゆえに、大方の受験生がある程度の点数を獲得でき、設問内においては受験生間であまり得点差がつかないのも事実です。(翻って、このような基本的な問題を落とすと、二次試験の合格は至難の業になります。)
特に初学者やまだ実力がついていない人は、こういった問題で得点を積み上げてほしいです。(点の取りどころです。)初学者によくありがちなのは、どの問題にも均等に時間配分し、共倒れになるケースが多いです。解き始める前に問題の難易度を見極め、時間配分や力の入れようなどの優先順位を決めましょう。(筆者は、模試を受験した時に、解答した順番と、設問ごとに解き始めた時間を、問題冊子の余白に記入していました。)事例企業と同様に、受験生も「限りある経営資源の効率的な配分」に留意する必要があります。
※初学者は、最初の頃は問題の難易度の見極めは難しいでしょうが、過去問を解き、さまざまなパターンの問題に取り組めば、徐々に慣れてきて、おのずと解答すべき順番や、事例企業の方向性が見えてきます。(このことは一次試験も同様で、第1問から順番にマークをするのではなく、一番正解の自信のある問題からマークすべきです。)
5.一貫性のある解答とは?
また、初学者は解答時間の序盤にこの手の問題を解く人が多く、上級者ならば前半に他の設問を解き、論理的な整合性や解答の一貫性を図るために、「後付け」で最後にこの問題を解く人が多いです。(大外しのリスクが低減できます。)
例えば、事例Ⅰでの解答の大外しとは、以下のようなものが挙げられます。
①レイヤーを間違える(環境分析・経営戦略・組織構造・組織文化・人事施策など) 事例Ⅰではよくありがちで、事例Ⅰが難しいゆえん。いわゆる何を書いていいか分からない状態に陥ること。
②レイヤーは合っていても、出題者が意図した正解と乖離した解答を書いてしまう。
余談ですが、本解答例では、100字以内という比較的少なめの字数制限であるため、読点「、」を極力使用していませんが、例えば「事例Ⅲ」のように、140字や160字という字数制限の場合には、読みやすさを工夫するために、あるいは字数調整のためにも、むしろ「、」をぜいたくに使ってもいいでしょう。
6.因果関係を意識して書くことのメリット
次に、因果関係を意識して書くことのメリットを列挙します。(これ以外にもメリットは当然あると思います。)
①思いつきの解答や論理の飛躍した解答ではなく、与件に寄り添った解答ができる。
②解答の冗長性(だらだらと書く)を排除できる。
③重要キーワードの抜け漏れやダブりの防止(MECEの徹底)
④解答候補のうち、書くことと書かないことの取捨選択において、得点が入りそうな勘所(かんどころ)をつかむことができる。
⑤因果関係の因に与件、果に知識を持ってくるなど、バランスのとれた解答ができる。(一文があまり長くなりすぎないという意味も込めて。)
⑥因果の因を考える際に、「真因」を訴求したり、背景にある「経営理論」を想起しやすくなる。
⑦ただの箇条書きやキーワードの羅列、並列的に書いた場合と比較して、文章の重厚感が生まれ、多面的・複眼的な解答を心掛けることができる。
⑧出題者の出題意図や、受験生に何を書いてほしいのか、期待されている解答候補を捉えやすくなる。
⑨事例Ⅰは100字×5問で出題されることが圧倒的に多く(一部例外の年度もあるが)、解答の編集の段階で、100字にコンパクトに要約する能力も試される。何のことを書いているか読んでもさっぱり分からない解答よりも、因果で書いていることが採点者に分かる解答の方が、得点が入る可能性が高い。最悪、字数が余れば、何も書かないと点は入らないが、「組織活性化を図る。」など、何か書いた方がまだマシ。
⑩結果として、採点者等の読み手にとって、読みやすい文章表現ができる。(ゆえに得点が上がる。)
⑪【番外編】一次試験の『企業経営理論』の学習効率も上がる。(理解しやすくなる。一次と二次の学習のシナジー効果が発揮できる。)
7.因果関係を表現できる定番フレーズ集
また、すぐに使える因果関係を表現できる定番フレーズ集をご紹介します。(筆者ではありませんが、マス目を確保するために「事」「為」などと、漢字で書く受験生もいました。)
①「ことで」(~することで、~のことで)
②「により」(~によって)
③「のため」(~のために、~したため、~だったため)
8.1点の重み
私自身、合格した令和4年度の二次試験の得点開示では、事例Ⅰこそ67点でしたが、総得点は243点で薄氷を踏む思いでした。8,712人が受験した令和4年度に限らず、二次試験では1点の間に何十人もの受験生がしのぎを削っています。
加えて、出題の趣旨こそ公表されども、正解が発表されない二次試験では、解答の記述内容の正確性もさることながら、採点者に自分が理解していることをいかにアピールするかが、合格への近道と考えます。同じ食材を使っても、素人と一流の料理人とでは、出来上がった料理の味や見た目の印象に大きな違いが生まれるように、同じ解答要素を使うにしても、因果関係を意識した解答とそうでない解答とでは、採点結果によっては1点や2点の差が生じると思います。
二次試験の受験経験者の方は、80分という制約時間において、なおかつ、あの極限の緊張状態の中で、1点をもぎ取ることの難しさは身をもって経験されたことと思います。因果関係を意識して解答を作成することは、他の受験生と差別化を図る(決して「何馬身差もつける」という意味ではなく、「半歩でも前に出る」という意味です。)うえでも、また、自らの解答の精緻化を図るうえでも、肝要と考えます。これから皆さんが二次試験の過去問や予備校の答練や模試にチャレンジする際に、まずは腕試しや力試しとして、このことを頭の片隅にとどめておいてもらって、ぜひ因果関係を意識して解答ロジックを組み立ててほしいと思います。
9.結び
このブログをご覧の受験生の皆さんは、使用している学習教材や予備校なども千差万別と思われます。私はこれから一年間、学習教材や予備校で取り扱われる機会こそ少ないけれども、妥当性があり、受験生にとって有益な情報を中心に記事を書いていこうと思います。
お読みいただきありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
(了)