「機会」としてのインバウンドをどう取り込むか?

こんにちは。シン・カオス王子です。コロナ後、外国人観光客の入国規制がなくなり、都市部では外国人観光客を見ない日はなくなりましたよね。例えば、大阪・心斎橋筋の混雑ぶりは、それはもう、すごいものがあります。私が住む地方部においても、かなりの数の外国人観光客を見かけるようになりました。今回は、診断士2次試験の過去問でも頻繁に出てくることから、「外国人観光客=インバウンド客」について考えてみたいと思います。

過去問でも頻出する外国人観光客

令和5年度の事例Ⅰでも、X社と経営統合したA社が取り込むべき顧客層として「地域の食べ歩きを目的とした外国人観光客や若者」が挙げられていましたが、この外国人観光客は至る所で与件文に登場してきました。例えば、下記のとおり。

  • 令和4年度事例Ⅱ:コロナ前のB社(精肉事業者)はインバウンド需要の拡大を受け、ホテル・旅館との取引が絶好調(コロナで大打撃)
  • 令和2年度事例Ⅰ:A社(酒蔵)インバウンドで売り上げ拡大。外国人従業員もレストランで活躍。
  • 平成30年度事例Ⅱ:ここ数年はインバウンド客が急増している(X市におけるインバウンド客数の推移つき)

特に、平成30年事例Ⅱについては、全面的にインバウンドを押し出した与件文となっており、「館内には大広間があり、その窓からは小ぶりだが和の風情がある苔むした庭園を眺めることができる」など、インバウンド関係者であればアンテナがビンビンに立つ記述も印象的でした。

「機会」としてのインバウンド

私はこれまで2回、実務補習を受けたのですが、過去2回ともに、「インバウンド」がSWOT分析のOとなりました。そのうち一つは、工芸品を扱う事業者だったのですが、職人の技術をどのように海外客に訴求していくかで頭を悩ませたものです。で、このインバウンド、様々な業種に波及しうるという点で、国や自治体が熱心に推進しているのですが、指を加えて見ているだけでは、なかなか取り込むことが難しいものです。それぞれの業種で新規顧客を呼び込み、客単価を上げる工夫が求められており、私が知っている範囲でもこんな取り組みをしている企業があります。

【ホテル】海外の旅行会社との契約の際に、一般よりも低価格で出すが、多くの送客をしてくれる旅行会社に対しては、1日10部屋を必ず確保するなどして、閑散期でも稼働率が上がるようにする。客単価はホテル内での飲食や土産物の購入を促すことで上げられる。

【タクシー】片言でもよいので、外国語が話せるドライバーを育成する。また、地域の観光地についての研修を取り入れ、ガイド兼運転手をできるようにする。(家族連れがジャンボタクシーを貸し切って、エリアの観光地を周遊する事例などは意外と多いです)。

【印刷】飲食店やホテルの中には、インバウンド客を呼び込むために、メニューや案内表示を多言語表記したいところも増えており、多言語でのデザインを得意とするところもある。

看板が読めて安心する外国人のイラスト

インバウンドの成功事例とは?

インバウンドの成功事例としてよく名前があがる地域が、岐阜県高山市です。国内では平成18年に「観光立国推進基本法」が初めて制定され、インバウンド誘致に向けた取り組みがスタートしましたが、高山市は昭和60年代の段階で「国際観光都市」を宣言。今ではインバウンド誘客の成功事例として取り上げられることも数多くあります。同市の特徴は、徹底した調査分析を行ったり、ターゲット(ここでは主に国・地域)別にパンフレットを作り分けたりするなど、地域としてとても細かな対応を行っていることです。また、令和5年度の事例Ⅰでもありましたが、食べ歩き需要にこたえ、高級食材である飛騨牛の串焼きや地域に伝わる五平餅を散策しながら楽しめる仕組みもインバウンド客を虜にしています。もちろん、高山は「飛騨春慶塗」や「高山祭」の屋台など、日本の伝統工芸を味わい、さらに朝市などで風情ある街並みを楽しむのに最適な場所ですが、もともとあった観光地のポテンシャルにマーケティングの要素を加えることでインバウンドの最先端を行く土地になったのだと考えられます。

インバウンド一本足打法にはリスクも

ただ、当然のことながら、インバウンドに完全に頼り切るのはリスクになりえます。コロナ禍は言うまでもなく、SARS、東日本大震災など、海外との往来が減ってしまう可能性は少なくありません。また、SNSによるプロモーションが容易になる中、ちょっとした不手際がSNSの口コミで広がっていくことも十分に考えられる話です。でも、インバウンドを事業の一つにするということは決して悪くないチャレンジですし、インバウンド客に満足してもらう対応をとることで、よい口コミが広がり、さらなる誘客につながることも十分に考えられます。オーバーツーリズムなどの問題も生じていますが、多くの中小企業がインバウンドという機会を生かしていってほしいと思います。

 

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