くろのゆです。本日もお読みいただき、ありがとうございます。
ゴールデンウィーク中~直後はいくつかの予備校で2次試験の模擬試験がありましたね。そちらを受けられた方もいらっしゃると思います。私も昨年はAASと大手予備校Lの模試を受験して、連休どころではありませんでした。
さて、模試の利用方法等はすでにこのブログで別に書いてくださっている方もいらっしゃいますのでそちらにお譲りし、今日は夏に迫った1次試験の学習法についての記事です。
はじめに
まず、ポイントだけ記しておきます。全体的な向き合い方(アプローチ)が①②の2つ、具体的な施策が③④の2つの計4つです。以降のセクションで、①~④についてそれぞれ詳述します。
- 全7科目で勝負する(科目合格は狙わない)
- 強い科目と弱い科目でメリハリをつける(満点を取りにいかない)
- 問題集を愚直に回して出題パターンをつかむ(重点単元に絞りこむ)
- 不足する知識だけ、ググって詰め込む(インプットを最小限に)
①全7科目で勝負する(科目合格は狙わない)
釈迦に説法ですが、1次試験は下記の7科目(いずれも100点満点)が2日間の日程で行われ、総点数の60%以上かつ、40点未満の点数の科目が1つもないことが合格条件です。本稿では、40点未満の点数を取ってしまうことを便宜上「足切り」と呼びます。
さて、私のシリーズは忙しい人向けの勉強法ですので、全7科目での勝負をしましょう、とお勧めしておきます。すなわち、2年がかり以上を視野に入れた科目合格は狙わないということです。
なぜかと言えば、そもそも時間がかかる前提に加え、科目合格はある意味リスキーだからです。診断士試験は、合格点に達した個別科目を繰り越して受験を免除可能な「科目合格」制を採用していますが、この制度では、合否判定の対象が直近受験した科目だけになります。つまり得意な科目で先に科目合格を取ってしまうと、後に苦手科目ばかりが残り、そこで6割以上の合格点を目指さざるを得なくなるというケースが発生します。
しかも、当然ながらその年の科目の難易度は受けるまで分かりません。ご参考まで、直前期の科目ごとの得意/不得意の見立て、それと実際に試験を受けたR4の各科目の点数はこのようなものでした。
科目 | 得意/不得意判定 | 所見 | 点数 |
---|---|---|---|
経済学・経済政策 | B | 大学時代やアナリストの知識でカバーできるが、問題を解くレベルに引き上げるのに時間が必要 | 64 |
財務・会計 | B | 簿記や証券アナリストの資格で 一定の知識はある | 60 |
企業経営理論 | A | コンサルタントという仕事柄、使いこなせる知識が多い | 70 |
運営管理 | C | 製造業の現場知識がほとんどないため、初出の用語が多い | 76 |
経営法務 | B | 知識はほとんどないが、文系科目っぽいので苦手ではないはず | 76 |
経営情報システム | C | 文系人間なので情報系は苦手。 基礎知識も心もとない | 72 |
中小企業経営・ 中小企業政策 | A | 中小企業支援も経験した。公共関連の知識もあるし、暗記モノなら不得意ではない | 53 |
この表をご覧いただくと、事前の見立てと実際の点数があまり相関していないのにお気づきでしょうか。いけると思った「中小企業経営・中小企業政策」(A)は60点に満たず、逆に覚えないといけない知識が多かった「運営管理」「経営情報システム」(C)は立派な得点源になってくれました。
もちろん、そもそもの得意不得意の見立てが間違っていた可能性もありますが、一般的に言って、単科目の難易度の振れ幅は全7科目の振れ幅よりも大きくなることが予想されます。出題者側も、毎年大きく全体の合格率が振れないようにバランスを取って作問するはずだからです。
多少の苦手や下振れがあっても、得意科目や上振れで取り返せると思ったほうが、メンタル的にも楽になると思います。もともと忙しい方向けの、という触れ込みですので、7科目を一気に取りに行くスタンスを改めておすすめしておきます。
②科目のメリハリをつける(満点を取りにいかない)
2つ目は、科目にメリハリをつけて、満点を取りに行こうとしないということです。足切りがあるため全科目バランスよく取れるに越したことはないのですが、これだけ広範な科目を問う試験で、なかなかオールAは目指しにくいと思います。
ある科目が苦手な理由が”勉強したことがなくて知識がないから”であればインプットを増やせばよいのですが、文系出身で、複雑な計算が苦手な方が、「経済学・経済政策」「財務・会計」で満点を目指せるかというと、たぶんそんなことはないですよね。(余談ですが、財務会計の知識はむしろ二次試験で必須です)。
そんなことをするくらいなら、暗記要素が強い「企業経営理論」「経営法務」「中小企業経営・中小企業政策」あたりを伸ばしたほうがよほど効率的です。特に「中小企業経営・中小企業政策」は中小企業白書の数値を丸暗記すれば、かなりの点数が見込めるはずです(私の場合はこれを怠ったのが点数が伸びなかった要因でした)。
ここで、①で述べた”全科目で勝負する”というアプローチが活きてきます。得意科目をしっかり伸ばし、苦手科目は落とさないようにすることで、トータルでの6割=420点がクリアしやすくなるはずです。極論ですが、得意科目と苦手科目が3科目ずつ、どっちでもない科目が1科目ある方が、得意科目ですべて80点、どっちでもない科目で60点を取れば、苦手科目はすべて40点でも受かりますからね(もちろん、こんな綱渡りな作戦にならないように対策しておく必要があります)。
③施策:問題集を愚直に回して出題パターンをつかむ(重点単元に絞りこむ)
さて、ここからは具体的な試験対策に移りましょう。拍子抜けなようですが、私は同友館から出ている「過去問完全マスター」シリーズの問題集(過去問完全マスター製作委員会 編)しか使いませんでした。
(同友館Online)https://www.doyukan.co.jp/store/search.html?c=29
この問題集は過去10年分の実際の問題から、単元別に構成されています。さらに問題ごとに重要度(A・B・C)も表示されています。これを7科目分買いそろえて、あとはノートにひたすら解いていくだけ。はじめて触れる知らない分野の問題や、何が何やらわからない問題でも、とりあえず山勘で埋めておきます。
特に1周目の出来不出来は気にしなくてよいです。重要なのは、頻出する出題パターンを抑えること、意味はよくわからなくてもなんとなく重要っぽい単語を頭に入れておくことです。
1次試験の問題は決められた範囲(*)から出題されます。もちろん毎年トリッキーな問い方をしたり、マニアックな知識を問うたりする問題も見られますが、多くの設問では、診断士として当然知っていなければならない考え方や知識が問われると考えるべきです。問題集を回すことで、何が重要で何が枝葉なのか、そしてそれらのうちどれが得意で、どれが苦手か体感できるというわけです。
*試験範囲の詳細は「令和6年度中小企業診断士第1次試験案内・申込書」の「14.試験科目設置の目的と内容」をご参照ください。
苦手科目は同友館の分類での重要度ランクA(一番上)だけでもこなせるように繰り返して解法のパターンを頭に入れて足切りを回避しつつ、得意科目は最低限B、できればCまで抑えておくことで点数を稼げるようにしましょう。私は得意(そうな)科目でも2周、苦手科目は3周+重要単元はもう1周ほどしました。たとえ理屈がわからなくても繰り返すうちに知識も追いついてきますし、最悪、あからさまに間違っている選択肢を排除できるだけで正答率が上がります。
時間がかかりそうと思われるかもしれませんが、最初の1周目はわからないものはカンでとりあえず答える、2周目以降はできている問題はすぐ正答を導けるようになるはずですから、どんどん効率化されていきます。質より量と思って、休みの日を充ててガンガン解いていました。
ただし、この方法には一つ注意点があります。同友館の問題集は科目ごとに単元で切り分けられていますが、実際の試験は問題の順番が大きなテーマごとにランダムです。なのでこの問題集だけで本番に臨むと、出題パターンの違いで戸惑う可能性があります。
そこで対策として、直前期にウェブ上で解ける模擬試験を一回解きました。過去問オンリーで臨む場合も、少なくとも一度実際の出題順でシミュレーションしておくとよいですね。
④施策:不足する知識だけ、急いで詰め込む(インプットを最小限に)
上の問題集を1周すれば、自分にとって未知の単元、理解度が浅い単元も見えてくるはずです。そうしたらその単元だけ、一度まとめて知識のインプットをしましょう。
念のため申し添えますが、分厚い専門書などを読む必要はないです。代わりに、Google検索で出てくる解説記事などを眺めれば十分。腰を据えて教科書を読んでいる暇があったら一問でも多く解いて詰め込んだほうがよいです。最近は多くのメディアで用語集や解説を出してくれていますので、有効活用しましょう。
例えば私の場合は、「運営管理」のうち、加工技術(溶接や絞り、旋盤等の加工機械のビジュアル)や小売などの店舗管理(棚のレイアウトなど)が頭の中でイメージしづらかったので、現場向けの薄いテキストを図書館で借りて、30分~1時間ほどパラパラとめくったり、YouTubeで機械が動いている様子の動画を見たりしました。これだけでも十分一次知識として使える(=試験で正答を選べる)ものになります。
また、診断士以外の関連する資格の知識をさっと浚うのも有効です。例えば簿記を取得済みの方はお使いになったテキストを通読してみてはいかがでしょうか。簿記は3級でもしっかり身についていれば、「財務・会計」で少なくとも足切りを食らうことはないはずです。
こうしたインプットはスキマ時間でもできますので、電車通勤の移動中や仕事中の休み時間なども使って、知識を補っていきましょう!
おわりに
以上、私なりの1次試験攻略法でした。改めて書いてみると思ったより脳筋なやり方でしたね。とはいえ、振り返るとインプットを最小限にし、手を動かして問題を解きながら身につけるというアプローチが、奇策に走るよりも有効だったように思います。
最後に一つだけアドバイスをさせてください。どうしてもわからないもの、枝葉末節の単元は勇気をもって捨てましょう。1次試験は絶対評価です。人より良い点数を取る試験ではありません。特に苦手科目の中の苦手分野、自分の中で一番厄介な分野などは、深入りするよりも大人しく捨てたほうが結局楽になります。
私の場合は「運営管理」のクリティカルパスの問題などは、問題集の解説を何回読んでもわからなかったため、本番で出たら仕方ないと思って、捨てました。もちろん、苦手科目でもできないといけない単元はありますので、そのみきわめのためにも、問題集を繰り返し解きましょう。
ここまでお読みくださりありがとうございました!