実務で使える診断士試験の知識と発想(くろのゆ)

くろのゆです。本日もお読みいただき、ありがとうございます。今年はずっと暖かい日が続いていましたが、ようやく冬らしくなってきましたね。二次試験受験された皆様は、楽しみ半分・不安半分で合格発表を待っていらっしゃるでしょうか。今回の記事は、試験対策とは趣向を変えて、実務に活かすという視点で診断士試験を捉えてみたいと思います。

試験に取り組まれている方にとっては釈迦に説法ですが、診断士試験では経営に関する幅広い知識を体系的に学ぶことができます。本記事では、「組織・人事」「マーケティング」「生産管理」「財務・会計」という二次試験の事例ごとに、実務でどのように活用できるのか考察します。

目次

1. 組織・人事(事例Ⅰ)

事例Ⅰの組織と人事は、企業経営において最も重要な要素の一つです。診断士試験では、事例企業の組織構造や組織文化に焦点を当て、現状分析とあるべき姿を検討します。たとえば、機能別組織やプロジェクト型組織など、会社の状況に応じた組織設計は、そのまま自社や自分の所属する組織について検討する力につながります。また、組織文化の側面では、従業員の価値観や行動規範をどう形成するかが問われます。

さらに、人材の能力開発や士気向上も重要なテーマです。研修や評価制度を通じて従業員の成長を促し、忠誠心やエンゲージメントを高める方法を学ぶことで、現場での人材管理の課題解決に役立てることができます。

2. マーケティング(事例Ⅱ)

事例Ⅱのマーケティングでは、事例企業の顧客の属性や自社のポジショニング、マーケティング戦略の現状と課題分析などがテーマとなります。特に重要なのは、「利益=収益-費用」という基本的な公式です。この公式を活用することで、収益を増やす施策や費用を削減する方策を漏れなく明確に検討できます。

そのほか、マーケティングのSTPや4Pやといった考え方は、自社のポジションや商品・プロモーションなどの戦略の改善と施策の実行を通じて収益を高める手段を検討するうえで重要です。

3. 生産・技術(事例Ⅲ)

事例Ⅲの生産・技術の試験では、事例企業の生産現場でのQCD(品質=Quality、コスト=Cost、納期=Delivery)の3要素が特に重視されます。このフレームワークは、ものづくりを行う企業だけでなく、サービス業においても活用可能です。

QCDのバランスをいかに最適化するかは、実務でも大きな課題です。例えば、品質を保ちながらコストを削減するためには、業務プロセスの無駄を洗い出し、改善する必要があります。また、納期の遅延を防ぐには、適切な工程管理や在庫管理が欠かせません。試験を通じて得た知識を現場に適用することで、効率的な運営が可能になります。

4. 財務・会計(事例Ⅳ)

事例Ⅳの財務・会計分野では、経営指標や損益分岐点分析がほぼ毎年出題される頻出のテーマです。経営指標では、企業の収益性・効率性・安全性(+ときどき生産性)を示す指標が特に重要です。これらの指標の中でも代表的なもの(売上高営業利益率・有形固定資産回転率・自己資本比率など)をいくつか覚えておき、計算してみると自社の財務上の課題や今後の方向性を考えることができます。経営的な立場にいない方でも、自社の決算発表を見て指標を計算してみることで、自社の将来性や事業の現状への理解が深まるでしょう。

また、損益分岐点分析は、実務で極めて有用な手法です。たとえば、新商品を投入する際に必要な販売数量を見積もる際、この分析が役立ちます。固定費と変動費を分けて考えることが、収益性向上の第一歩となります。

もちろん投資現在価値(NPV)といった、意思決定会計の考え方も実務上重要です(が、経営指標や損益分岐点分析ほどとっつきやすくなく、必ずしも万人が利用を迫られないので、重要度は少し低くとらえています)。

5. おわりに

このように、中小企業診断士試験で学ぶ知識は、表面的な詰め込みにとどまらず、現場で活用できる実践的な内容が多々含まれています。「組織・人事」「マーケティング」「生産管理」「財務・会計」の各分野で得た知識は、それぞれの職場やビジネスに応じた課題解決の道筋を示してくれます。

最後に個人的な体験談をお話ししておきます。筆者は前職でコンサルティングファームに勤めていましたが、あるとき研修で、MBA的な企業の事例をもとに、収支改善の打ち手の策定に取り組むグループワークがありました。この時、事例Ⅱの「利益=収益-費用」という定式が頭に浮かんだことで、【収益を上げるアプローチ】と、【費用を削減するアプローチ】に二分解して、それぞれを検討していくことをいち早く提案し、議論をリードすることができました。

コンサルだけでなく、事業会社でも自身の業務上・組織内の課題解決に診断士試験を通じて得られる視点は有効です。ぜひ現場での改善や新たな取り組みに役立てられないかという視点で、勉強に取り組んでみると、試験合格とはまた違ったモチベーションが得られると思います。

ここまでお読みくださりありがとうございました!

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