皆さんこんにちは。
AAS東京代表の早坂です。
今日は、NPVでよくある間違いについて語りたいと思います。
さて、まずは以下の設備投資案件のNPVを算出してみてください。
<例題>ある新規設備投資案件
- 投資額 100万円
- 設備の耐用年数 2年(定額法により減価償却。2年後の残存価格0円)
- 投資による税引き前利益の増分
(1年目) ▲10万円 (2年目) 20万円 - 運転資本の増減は無いものとする
- 法人税の実効税率は30%とする
- 計算簡便化のため、割引率は考慮しないものとする
どうでしょう。
NPVの算出としてはシンプルな問題ですが、皆さん算出出来たでしょうか?
一般的に、NPVを算出するためには、次の3つの要素を求める必要があります。
- 投資額
- 割引率
- 年々のCF(キャッシュフロー)
しかし、大抵の問題では、①の投資額と②の割引率は、設問文で条件として与えられています。
今回の例題では、①投資額100万円、②割引率なし、となっていますね。
問題になるのは、③年々のCF(キャッシュフロー)です。
年々のCFは、所詮はキャッシュフローなので、基本的にはCF計算書に基づいて計算すれば算出できます。
しかし、以下の公式を知っておくと、もっと簡単に算出することができます。
本問のように運転資本の増減や固定資産売却損益が無い場合には、この公式が使えます。
この公式に基づいて、上記の例題の条件を当てはめていくと、
減価償却費=100万円(投資額)÷2年(耐用年数)=50万円
1年目のCF ▲10万円×(1-0.3) + 50万円=43万円
2年目のCF 20万円×(1-0.3) + 50万円=64万円
∴ NPV=1年目CF+2年目CF―投資額
=43万円+64万円ー100万円
=7万円
となります。
これで、例題のNPVが算出できました
しかし、中には
と思った方もいるでしょう。
それは、恐らく1年目のCFの部分だと思います。
となっていますが、
という訳です。
・・・・・が、しかし、残念。
これは、上記の計算方法で正しいのです。
なぜかと言いますと、税金が0になるのは、会社全体の利益がマイナスの場合ですね。
例題の1年目の税引前利益は確かに▲10万円ですが、これは会社全体の税引き前利益ではなく、この設備投資案件の税引き前利益ですね。この点をまずはしっかり区別してください。
例えば、会社に、AプロジェクトとBプロジェクトという2つのプロジェクトがあるとします。そして、それぞれのプロジェクトの税引前利益を
としましょう。この場合、会社全体の税引き前利益は10万円となり、
税金は10万円×0.3=3万円となります。
ここで、それぞれのプロジェクト毎に税金を算出してみると、
B 20万円×0.3=6万円
∴ 税金=▲3万円+6万円=3万円
となり、全社の税金の額と一致します。
しかし、Aプロジェクトの税金を▲3万円ではなく0としてしまうと、税金の額が6万円となり、全社の税金額と一致しなくなりますね。
そのため、1プロジェクトの税引前利益がマイナスであっても、会社全体の利益がマイナスという条件が無い限り、今回の例題のように税金を考慮して計算するのが、正しい計算方法なのです!
ちなみに、平成25年度事例Ⅳ第2問(設問1)では、営業CFの算出において、一部の年度の税金を0として計算します。これは、植物工場が別会社という設定になっているため、
植物工場の利益がマイナス=会社全体の利益がマイナス
であるので、税引き前利益がマイナスの場合には税金を0として計算する訳です。
こちらも合わせて確認してみてください。