令和2年度事例Ⅳ第4問とイケカコノート

皆さん、こんにちは。AAS東京の金森大輔です。
中部地方の中小企業支援機関で働く、4人の息子を持つ41歳の診断士です。

二次試験を受験された方、お疲れ様でした。
事例Ⅳの試験問題について振り返ると、試験対策としての「イケカコノート」の有用性を痛感したというのが私の感想です。以前のブログ投稿でも触れました「意思決定会計講義ノート」(通称:イケカコノート)は診断士受験生の間では長年「バイブル」とも呼ばれる書籍です。以前の投稿で「思わぬプレゼント」と書いた通り、本年の問題においてはまさに第4問(設問3)がそれでした。
「Lecture4 事業部の評価」というセクションにおいて、ROI(投資利益率)とその留意点について書かれています。

資本コストを上回る利益を上げてはじめて企業価値は高まる

とあります。資本コストとは、借入金に対する利息支払や株式に対する配当支払などの資本調達にかかるコストであり、企業が最低限上げなくてはならない資本利益率を指します。

本問においてはシンプルに考えると、

400百万円のソフトウェアを導入
増加する営業利益=売上増加92百万円 ー 減価償却費80百万円=12百万円
ROI=12百万円÷400百万円=3% < 4%=銀行借入の年利

という時点で問題が生じていますね。

そしてイケカコノートには続けてこのような記述もありました。

ROIのもつ欠点を克服する概念には残余利益がある。

残余利益 = 管理可能利益 ー 資本コスト

※ちなみに管理可能利益とは、限界利益から事業責任者が管理権限を持つ固定費を差し引いたもので、事業責任者の業績評価に適した利益概念です。

これらを読み込んでいた人にとっては対処しやすい問題であったと思います。

なお、ROIのもう一つの問題点としては、キャッシュフローの時間差を考慮できないという点があります。本問では毎年売上が92百万円上昇するとありますので影響はないですが、投資方法によってキャッシュインタイミングが異なる場合には使用しづらいということを補足しておきます。その欠点を考慮した時間的価値を踏まえた投資の評価方法がNPV(正味現在価値法)ですね。

話をイケカコノートに戻しますと、第2問(設問2)もいわゆる「デシジョンツリー」というジャンルで、イケカコノートにおいては「Lecture12 不確実性と情報」という単元で学ぶことができました。

ちなみに過去問においてイケカコノートがダイレクトに効力を発揮したと思える問題は以下の通り。

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【H25年度 第3問(配点30点!)】
品質原価計算における4つのコストが問われる90字の記述問題でした。
イケカコノート「Lecture11 原価計算の新領域」を読んでいた人にはアドバンテージがあったでしょう。

【H27年度 第3問設問3】
NPVによりプロジェクトの収益性を評価した設問2を受けて、流動性に考慮した評価指標を計算する問題でした。
とっさに「回収期間法」が思いつくかどうかが求められ、正答率は低い問題だったと思います。ちなみにイケカコノート「Lecture8 戦略的意思決定(1)」の中にはこのような記述がありました。

「回収期間法は収益性を測定しないで、流動性を重視している」

※私がH27年度本試験でこの問題を正答し、合格することができたのは、イケカコノートを熟読したおかげです。

【H29年度 第3問設問2】
H27年度と似た論点で、設備更新案について「安全性=回収期間法」「収益性=正味現在価値法」について問わせる問題でした。
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著者の大塚宗春氏は早稲田大学教授を務め、会計検査院長も歴任された方で、診断士二次試験の事例Ⅳ試験委員に対しても絶大な影響を与えてきたと言われています。

これから受験を目指される方、是非お手に取ってみることをおすすめします。

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