こんにちは。たねがしまです。
寒さが急に厳しくなってまいりました。いかがお過ごしでしょうか。
二次試験も終わり、それぞれの結果とこれからの計画に向かい合う時期を迎えていらっしゃるかと思います。二次試験の偶数年度で合格を逃してしまった方の心情も、多年度生としてとても理解できます。
継続するべきか、やめるべきか。この度は自身が多年度生であったことと、最近扱った実務の例をとりあげ、継続できたことの価値について触れたいと思います。
「これは演習ではない」
本年はコロナ禍に対する救済策として、様々な支援策が講じられました。中小企業診断士に対する各種補助金の申請支援依頼も多く、今年はとりあえず実務から距離を置こうと呑気に考えていた自分にも、支援する機会(諸事情あってせざるを得ない機会)が訪れました。頭の中で、「これは演習ではない、繰り返す、これは…」とアラートが鳴り響きます。
理想を言えば、しかるべきセミナーなどに参加して知識を補い、詳しい先輩診断士に渡りをつけて指導いただきつつ、新人らしく進めていきたいところでした。しかし、時間も人脈もなく、要項を読み込み独力で進めざるを得ない状況でして、とりわけ提出すべき資料の数々のうち、「事業計画」をまとめることが最大のミッションとなりました。
スマートに、とはもちろん参りません。ただ目の前の経営者様にヒアリングして、情報をまとめ…しかし、何を聞けばいいのか、アウトプットはどういう形になればいいのか。実務補習のようにチームで分業することもできず、不安しかありませんでした。
一呼吸おいて少し冷静になり、今までやってきたことを振り返ってみます。繰り返し読み込むたびマーカー跡が異なった与件文のファイルと、診断・助言の回答を書き続けて目に見えて減っていったシャーペン芯のケース。そしてAAS生なら魂に刻んでいるフレームワーク。現状を与件文のようにまとめ、フレームワークに照らして戦略的な不足を補ったものを事業計画と捉えればいいのではないか、と判断しました。このゴールに向けて、二次試験設問のような質問を経営者様に投げかけたり、自問自答したりして内容を充実させていきます。プロセスが分かれば、アウトプットは実務補習で得た報告書ノウハウでなんとか仕上げられそうです。
二次試験が方法を教えてくれた
現状をまとめることは、精度の差はあるものの、担当者を問わずにできることだと思います。しかし、未来に向けて計画として事業を書こうとすると、何を課題とし何を決断しなければならないのか、判断の背景となる枠組みが必要になります。
二次試験が教えてくれたのは、与件を読んでSWOTで捉え、フレームワークにプロットして設問に答え、事業ビジョンを構築していく一連の流れでした。この流れで作り上げた申請書は、然るべき機関で採否を問われることになり、内容が本当に良かったかどうか、もっといい方法があったのではないか、定かではありません。
しかし、事業計画を練る中で、経営者様の中に課題が芽生え、なぜこの事業をやらなければならないのかという自覚(特に社内資源である社員のスキル)を認識していただくことができました。「はっきりしなかったけれど、こういうことがしたかったんです」とおっしゃっていたのは、納得できる何か、一貫したビジョンをご認識いただけたからだと思います。採否はどうあれ、経営者様ご自身と私どもとの関係において、一定の価値を生むことができたのではないかと思います。
なお、今回の経験においては、外部環境の機会と脅威の捉え方は経営者様と同じような視点であるものの、内部環境を見る目、とくにこれから人がどう育って何が武器になっていくのか、他社にない差別化要因は何か、といった部分が希薄であると認識しました。希薄、と感じたのは、二次試験対策を繰り返す中で、与件にちりばめられた事象をフレームワークとレイヤーで捉え、戦略として構築する力を培うことができたおかげです。
継続すること
合格に至る道のりで、積み上げるものは人それぞれです。結果だけを問えば、期間が短く積み上げるものが少ない方がパフォーマンスは良いですし、元来センスがあるのかもしれません。一方で、多年度を重ね、積み上げてきた過去が自信の背景となっている方も多くいらっしゃいます。困難にぶつかっても、積み上げてきた努力を顧みることで力が湧く、とおっしゃいます。
自分も合格年は奇数年だったので、年明けから春にかけては続けるかどうかの気持ちとの闘いが続きました。ただ、毎日、スキマ時間でもいいので、代替するものをはかりにかけながら何かしら診断士分野に触れることは怠らないようにしました(以前ご紹介したとおり、ロッカーでぼっちめしです)。継続して積み上げたことで、初見の業務対応を顧客の信頼を損なうことなく遂行することでができたのだ、と思います。
試験に向けて決定的な中止材料が無い限り、どうか、少しずつでもいいので、継続していただきたいです。土壇場でも、続けていた分の過去が支えてくれると思います。二次試験対策の道のりは、他でもない、診断士になるための基礎訓練です。
類を見ない大変な1年間、誠にお疲れ様でした。まずはご自身の努力を労い、年末のひと時を心静かに過ごせることを、お祈り申し上げます。