こんにちは。AAS卒業生の典茶漬け(のりちゃづけ)です。
今年も東南アジアでお正月を迎えました。
昨年、令和2年(2020年)は、海外在住の受験生にとってはかなり厳しい年となったようです。新型コロナウィルスの影響で日本への一時帰国がかなわず、泣く泣く受験を見送られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような不安定な状況下だからこそ、“海外で中小企業診断士の取得を目指す意義と目的”をあらためて認識し、足元をしっかり固めましょう。
本稿に際し海外在住の中小企業診断士に関する公式データが見つからなかったため、これからお伝えする内容は全て私個人が得た情報や見解をベースとしています。掘り下げや裏付けが甘い粗削りな内容かもしれませんが、少しでも海外受験生の皆様のお役に立てれば幸いです。
海外の中小企業診断士、3つのグループ
手始めに、今現在海外に住んでいる中小企業診断士はどのような方々なのかを整理してみました。
海外にいる診断士の性質において日本と最も異なる点は、“フリーランスの中小企業診断士(独立診断士、プロコン)”が極めてマイナーな存在である、という点です。海外にいる診断士資格の保有者は基本的に何らかの組織に属しており、所属先の属性により以下3つのグループに分けられます。
海外在住の中小企業診断士3グループ
1.日系企業の海外現地法人など現地の民間企業で働く企業内診断士
2.独立行政法人や公益財団法人など団体から出向・派遣の診断士(例:JICA、中小企業振興公社)
3.日本政府もしくは政府関係機関から出向・派遣の国家公務員(例:省庁、政府系金融機関)
この3グループのうち最も人数が多いと考えられるのは、「1.日系企業の海外現地法人など現地の民間企業で働く企業内診断士(海外の企業内診断士)」、です。
“海外の企業内診断士”の多くは駐在員として現地の日系企業にお勤めの方々です。
多数派なのに情報が少なくその姿を捉えにくい、この“海外の企業内診断士”に焦点を当ててみましょう。
海外の企業内診断士、その多くは経営中核を担う駐在員
海外の企業内診断士が所属する企業は多岐に渡ります。私がいるここ東南アジアのタイでは、約半数がメーカー系で、他は金融・サービス業、卸売、R&Dなど、幅広い分野に及んでいます。診断士の方が担う職務では事業企画を含む経営全般が最も多く、次いで海外展開やマーケティング、経理・財務と続きます。一人で複数の職務を兼任するケースもあるようです。基本的に役職付きの駐在員ということもあり、海外の企業内診断士は所属企業の経営を左右する重要な存在、といった印象です。
一方で、日本と同様に海外の企業内診断士も、社内においては診断士という肩書ではなく、社員(駐在員)として本業に専念されている方がほとんどのようです。何かと多忙な駐在員という立場では、副業でコンサルティングに励むことはなかなか難しいのかもしれません。
では、このような駐在員の方々にとって中小企業診断士という資格は、一体どのような意味を持つのでしょうか?
実際に海外で駐在員として働く中小企業診断士の方に直接話を伺いました。
インタビュー日時・場所:2020年12月某日、タイのバンコク市内
インタビュー相手:タイ在住の中小企業診断士、Kさん
Kさんについて:大手電気機器メーカー(東証一部上場)のタイ拠点に勤務の駐在員。営業支援・事業企画担当。
2013年に診断士登録、2019年よりタイ国(バンコク近郊)駐在。
Kさん、お忙しいなかインタビューにお答えいただき本当にありがとうございました!
海外赴任は“国際派診断士”としての土台を築く最高の機会
インタビューで得られた率直な声からは、駐在員でもある海外の企業内診断士が、診断士という肩書の活用と維持において、難しさや苦労を抱えていることが見えてきました。しかし一方で、診断士としての能力やネットワークが、海外で働く上で大いに役立つということも多分に示されました。
日本では大企業でも海外においては中小企業であることが多い現地法人では、駐在員が経営層と直接対話する場面や専門外の仕事を任されることが日常的に起こります。その際、診断士としての幅広い知識と思考・判断力があれば、初めての事案であってもある程度的確な対応ができるでしょう。
これはなにも診断士になった後の話とは限りません。
受験生として診断士の学習をしながらでも十分にその効果を発揮し、恩恵を得ることができます。むしろ学んだ知識やスキルを実践する上で現地企業は最高の場です。
海外で本業に励みつつ診断士の学習を続け、赴任中もしくは帰国後に資格を取得すれば、国際派の中小企業診断士(国際派診断士)としての土台が出来上がります。
中小企業の国際化や海外展開が活発化する中で、それを支援できる国際派診断士の存在は今後益々重要になると言われています。海外で苦労しながら培った課題解決力と、相手へのリスペクトを重んじるコミュニケーション力、そしてユニークな人的ネットワークを有する海外赴任経験者は、国際派診断士としてまさに適任なのではないでしょうか。
それになんと言っても、サラリーマンと違って中小企業診断士には定年がありません。
元気ならばいつまでも、企業の枠どころか国境を超えて活躍できるのです。
確かに今は一時帰国での受験が困難など厳しい状況かもしれません。
しかしどうか諦めずに、その先にある大きな目標に向かって学び続けて下さい。
ここまで読んで頂いた皆様と、いつかどこかで、お互い診断士としてお会いできることを切に願います。
[参考] 国際派診断士に関するリンク:
J-SMECA 特集記事 これからの診断士の国際化を考える(平成29年2月)
典茶漬け(のりちゃづけ)の正体:
東南アジアはタイの日系現地法人に勤務、海外就労歴9年
国際派診断士を目指し、まずは診断士登録に必要な実務補習・実務従事の機会を全力模索中
学習・受験履歴
【H27(2015)】 1次試験○ → 2次試験× 独学
【H28(2016)】 → 2次試験× AASで修業開始
【H29(2017)】 1次試験○ → 2次試験× AAS
【H30(2018)】 1次試験○ → 2次試験× AAS
【R1 (2019)】 → 2次試験○ AAS卒業