こんにちは。
いよいよ12回目の投稿になりました。地方公務員(♀)のたんぽぽです。
私自身、合格発表から1年が経ち、4月の商工振興課への異動からもほぼ1年。
立場柄、「事業再構築補助金の申請サポートを副業で行っています!」てな訳にはいきませんが、
てなわけで、目まぐるしい1年を過ごしてきました。
今日は、そんな「行政職員の中小企業支援現場」についてお知らせしまーす。
■商工振興部署のしごと
1年回ってみて、ざっくり言うと以下のような仕事がありました。
- 雇用創出(企業誘致、就職面接会等の開催)
- 企業活動支援(設備投資や雇用の促進)
- 産業振興(地場産業の販路拡大、ブランド発信)
- 金融支援(利子補給など)
- 緊急の経済対策(コロナ、物価高騰対策)
また、変わったところではこんなのが。。。
そら、肉300g買ったつもりが、「はかり」が悪いせいで、250gしかなかったら嫌やろ??
うちの市の場合、支所(合併前の町村役場の建物)ごとに、管内の事業者さんに対象となる「はかり」を持って来てもらって計量検定所の方の検査を受けてもらいますが、管内の対象事業者さんに案内を出したり、当日の運営サポートをしたり、広報を担うのは当課の役割でした。
こういった「公正で安全な取引」を守ることも商工振興部署の仕事なのです。
さてさて、こうした行政職員の中小企業支援現場から、今回は「雇用創出」に焦点を当ててお届けしまーす。
■企業誘致
地域の「雇用創出」というのは、全国的な人口減少、少子高齢化の進展の中で、地方自治体にとって重要なテーマです。
例えば「工業団地」的なものを整備して、新たな工場を誘致するために分譲する用地・インフラを整備するというのも自治体の事業になります。
また、工業団地ではなくても、1つの企業、1つの量販店、1つのサービス事業者の進出が地域にあれば、そこに正社員やパートなど、住民の仕事が生まれることになりますし、企業が投資した設備・償却資産について地方自治体としては「固定資産税」が増えるなど、税収増はもちろん、それを財源とした施策の展開にもつながります。
地方への進出を検討される企業さんの相談に乗りながら、「企業誘致」を進める・・・というのは、自治体商工振興部署の重要な業務のひとつです。
企業さんは当然いくつかの候補地を持たれていますので、自治体側から見れば、新規立地企業に対する助成制度を設けるなどして優遇策をPRしています。例えば私の市でも、操業に伴い雇用した市内在住の従業員数に応じた助成金や、投下固定資産の固定資産税を一定期間減免するなどの支援策を展開しています。
企業誘致に熱心だなーと個人的に感じるところに、佐賀県がありますので、特設サイトをぜひご確認ください。
■採用活動支援(合同就職面接会の開催など)
一方、すでに立地されている企業さんの採用活動を支えながら、雇用創出を図ることもあります。
例えば、市内企業を一堂に集めて、新卒学生や一般求職者を対象に開催する「合同就職面接会」です。
こうした事業は、自治体として、ハローワークなどの行政機関とも連携して行うことから、例えば 25年3月卒の新卒学生に対して、24年3月から採用情報は公開できますが、6月までは合同就職面接会は開催できません。大手企業などが前倒しで学生確保に動くのに対し、私たちは、政府や経団連が主導する採用スケジュールを遵守するからです。
■創業支援
「創業支援」は、自治体にとっても定番のテーマです。
県下では私の自治体以外でも、多くの自治体が創業支援のための補助金を独自に設けています。
で、この創業補助金。
わかりやすいところで、飲食店を個人事業主として開業する・・・といった一般的な例だけでなく、本当に地方では「多様で」「ニッチな」職種での創業案件が見られ、地域事情や人口動態等の背景、地域資源等を加味して、「地域の独自性を活かした創業を支援する」ということには意義があると感じます。
中小企業診断士としては、お住まいの自治体が独自で設けている創業補助金はおさえておきたいところです。
創業は、当然に女性や高齢者も含めた活躍の場としても期待されますし、地域経済への波及や、創業時は代表1人であってもゆくゆくは地域の雇用創出につながることなどが期待されます。
一方で、現場で感じる課題感としては、なんとなく「創業者お1人の仕事」のその先、雇用につながる展開感が掴みにくいところです。
また自治体の創業支援は、創業者にとって身近で相談しやすい一方で、初めての補助金申請・行政との関わりになる部分があり、そもそも「公金の投入された補助金」を活用することのルールをお伝えしていくことも重要になります。
例えば、補助金で得た設備は目的外利用はできませんし、一般的には耐用年数あたりまで自由に処分することができません。
また創業者自身の事業計画が当初はまだ揺らいでいることも多く、創業補助金の(自治体)担当者は創業希望者から相談を受けて、補助金交付を行うまでに長ければ1年近く相談対応しているようにも見えます。
ただ私自身は、その相談対応の過程で学べることがとても大きいと考えています。
自治体職員の事務として、
●補助対象経費や補助率や額の算定、対象経費が補助金交付の目的に合致するかなど、要綱に伴ってしっかり対応する事務的な細かい目線
●市場の動向や販路、事業者自身の強みや資源を聞き出してビジネスのイメージができるか考えるという視点
●創業希望者が何をかなえたいのかという大きな夢を聞きそれを関心を持って聞きながら相手を動機づけていくこと
など、総合的な相談対応姿勢が学べるからです。
担当者は、毎回のニッチな相談に苦労はしていますが、この1年でも成長しただろうと感じます。
■事業承継
「事業承継」は、全国的にもグングン来ているテーマですね。
これがなされることで、産業の維持、雇用の維持も期待されます。
これについては、私の自治体でもまだまだこれから普及啓発をしていかないといけないテーマです。
一方で、すでに市内には「事業承継補助金」を活用し、家族間承継を実現しておられる事例もあるため、承継時に経営革新を行なったポイント等も含めて、市内にご紹介できるような機会を作れればと考えています。
事業承継は
- 家族間承継
- 従業員承継
- 第3者承継
とあり、③については、片方で「創業希望者」が存在する中、彼らにとっても創業時の設備投資等のリスク低減につながる可能性もあることから、「創業希望者」と「事業を承継したい事業者」のマッチングも見据え、「引継ぎ支援センター」が全国の都道府県ごとに設置されています。
私たち自治体も地域のセンターと連携を深めていくことが重要課題です。
■副業人材活用
こんなテーマも、地域の雇用現場に出てきています。
- いつか手をつけなければならない業務であることは確かだけど、最優先でもない
- 人材を雇用するほどでもないので、社員が隙間時間でやっているがなかなか手がまわらない
- 専門業者に委託するほどの高額費用負担はできない
というような、まさに「採用活動のためにホームページを魅力化したい」的な業務について、都市部企業人に副業でやってもらうというようなことです。
すでに、副業兼業マッチングサイトも多く存在しています。
この手法は「雇用創出」にはなりませんが、雇用創出の隙間を埋める人材確保の手法として、地方では注目されています。
令和4年度の国の補正予算で「副業・兼業支援補助金」も創設されています。
人口とともに、都市部に一極集中している中核人材のスキルを、地方に還流させていくことも全国的課題なのです。
私の自治体でも、こういう課題解決の方法もあるよという普及啓発セミナーから始めていますが、まだまだ「副業人材に仕事を頼むってどういうこと?」という疑問を素直に持たれている事業者も多く、継続的な取り組みが必要です。
■最後に
4月に異動して、途中で国の「物価高騰」に関する経済対策があり、地方自治体に配分された交付金を活用する事業に急遽対応するなど、慌ただしい初年度となりました。
それでも、行政職員の現場として、こうした中小企業支援・産業振興に携われること、新たに法や制度の勉強をする機会に恵まれていることが本当にありがたいと感じます。
引き続き、地方自治体の現場で中小企業診断士資格を活かしていきたいと思います。