くろのゆです。本日もお読みくださり、ありがとうございます。
さて、診断士の主なキャリアとして、企業内診断士、あるいは独立診断士としての活動が挙げられますが、人によってはコンサルティングファームでコンサルタントとして活動することを考えている方もいらっしゃるのではと思います。
筆者はコンサルティングファームで5年ほどキャリアを過ごし、その間で大企業向け・中小企業向けの様々な案件にかかわる機会を得てきました。本日は、筆者の経験から大企業向けと比較した中小企業向けのコンサルティングについて、違いや魅力について述べていきます。
筆者の中小企業向けコンサル経験
5年間のコンサルタント時代の後半2年ほどは、中小中堅企業向けのコンサルティングに従事しました。自分が所属していたファームは一応大手に属する会社だったため、中堅以下の規模のクライアントへのコンサルティングはほとんどないのですが、たまたま所属先が国が行う中小企業支援の施策の実行部隊に採択されたことで関与することになりました。
ここではいちコンサルタントとして直接業種も規模も様々な中小企業への販路開拓を支援しつつ、マネージャーとして国や地方の中小企業支援機関(商工会議所や商工会)と連携して産業振興の仕組みを考えるという、エキサイティングな業務に携わることができました。
およそ2年ほどこのプロジェクトに参画し、のべ5-6社(面談だけしてコンサルまで至らなかった会社を含めて10社以上)の中小企業に対して、営業やマーケティングなどのサポートをしてきました。
経営レイヤーの課題への挑戦
大企業向けと比較した中小企業向けのコンサルの第一の特徴としては、経営者との距離が圧倒的に近いことが挙げられます。大企業向けのコンサルでは、相対するのがせいぜい一組織の長(部課長や本部長クラス)で、例えば人事・労務のシステム導入、特定の製品の営業支援などにスコープが絞られていることも多いです。一方、中小の場合は社長や工場長(製造業における工場長は事実上のナンバーツーです)、常務専務などの役員と対面して経営支援する経験を積むことができます。
どんなに小さな組織でも長として活動する人はそれぞれに視野・考え方・専門性などに秀でた点をお持ちで、そこに触れることは大きな刺激になります。また、そういう人の悩みにじかに触れあって解決策を模索していくことはチャレンジングですが、それだけに道筋が立った時の面白さは格別なものがあります。
当然、そういう経営層が抱える課題は経営レイヤーの高い視座からの課題ですし、解決のために求められる能力も多岐にわたります。筆者は財務会計など定量的な能力を求められるサービスは苦手だったのですが、ある支援先が新規事業のための投資を行うにあたり、NPV(投資現在価値)や回収期間を計算してシミュレーションするなど、それまでやったことがなかったソリューションにも果敢に挑戦する姿勢が求められます。
筆者が支援していた会社は東北地方にあったため、出張して現地のオフィスに訪問したり、工場を見せてもらったりと経営者と密接なコミュニケーションをとりながら課題の掘り起こしを行っていました。仲良くなって信頼してもらうと、経営者側から電話でいろいろと本音ベースの相談を受けたりと、頼られて仕事をしているという実感を得ることができます。なんなら数年前クリスマスイブの朝に、当時担当していた中小企業の工場長から、「『ChatGPT』ってうちの会社でも導入したほうがいいかな?」なんて相談を受けたことを今でも思い出します笑
変化を間近で感じられる
第二に、変化を間近で感じながら仕事をすることができます。大企業の場合、意思決定に時間を要することも多いため、提案したことがすぐ実行されるとは限りませんし、実行したことの成果がすぐに表れるとも限りません。逆に中小の場合は、結局社長が「やれ」と言えばすぐに実行されるスピード感がありますし、規模が小さいので施策の効果が出るのも早いという点は、違いが大きいと言えます。
筆者が支援していたある建設会社では、営業スタイルが初歩的で、相手のニーズを聞き取って提案していくタイプの営業ができず、従来からの公共工事しか受注できないという課題を抱えていました。公共工事は実入りが少なく、やればやるほど外注費がかさむという問題があり、民間向けの提案営業をしっかりできるようになりたいというニーズを相談されました。そこで筆者が、実際に展示会で出会った企業や、土木に詳しい大学教授から紹介された企業などの顧客候補をクライアントに引き合わせ、面談に持っていく資料を詳しくレビューしたり、提案後のラップアップを毎回行うことを徹底しました。
その結果、次第に営業資料がブラッシュアップされ、相手のニーズを聞き取りながらソリューションを提案するスタイルの営業を営業課長が身に着けることができました。その会社は従業員50人程度だったのですが、だれでも名前を知っている大企業を相手に、実地でソリューションのテストにまでこぎつけるなど、パイプラインを迅速に前に進めることができるようになりました。
こうしたスピーディな変化を肌で感じられる点も、中小企業向けコンサルならではの魅力といえます。さらに言えば、変化を感じやすいということは、コンサルタントとして自分が企業に与える影響も大きいということです。そういう責任を感じながら、自分が担当として一企業の経営に向き合うことで、メンタル的にも大きく成長できます。筆者も、中小企業向けのコンサルに携わった2年間で、コンサルとしての総合力が大きく上がったと自負しています。
おわりに
ここまで、大企業向けと比較した際の中小企業向けのコンサルティングの魅力について、①経営レイヤーの課題への挑戦と、②変化を間近で感じられる、という2点に集約して整理しました。
お読みくださった受験生の方はうすうす気づかれたかもしれませんが、中小企業診断士試験の特徴は、この①②に対応しているのです。
①経営レイヤーの課題への挑戦:診断士の1次試験の7科目では、経営理論にはじまり、財務会計、経済・中小企業政策、ITなど幅広い知識が問われます。これはまさに中小企業向けのコンサルで問われる総合力をつけるためのトレーニングとも言えます。
②変化を間近で感じられる:診断士の二次試験を思い出してください。与件文以外から勝手に推測して答案を書くのはNGですよね?支援する企業の個別事情に鑑みて、最適な打ち手を考えることがコンサルティングでも求められており、二次試験は与件企業の立場に立って、課題や持っている資源・外部環境に応じて最適解を考えていくことのトレーニングと言えるのです。
そんな風に考えると、大変な試験勉強が実務につながっていると捉えることができませんか?今日の記事が少しでも皆さんのモチベーションアップになったら幸いです。
ここまでお読みくださりありがとうございました!