こんにちは。AAS東京講師の三木です。
令和最初の第1次試験申し込み期限である5月31日が迫ってきましたね。
私は第2次試験の受験資格がある方にも、基礎的な知識のブラッシュアップや最新トピックの確認ができること、来年の2次受験資格を確保することで2次試験当日の精神的なプレッシャーを和らげられること、などから1次受験を勧めるようにしています。
今年は2次の学習に専念するという方も、試験後に公開される試験問題には目を通すようにしてくださいね。
平成30年度の事例Ⅱについて、「与件文をじっくりと読み込んでみよう」というシリーズをお送りしています。
<B社を深読み① 歴史を踏まえる> はコチラ
<B社を深読み② ターゲットのセグメント> はコチラ
<B社を深読み③ ルビに込められた意図> はコチラ
今回は、事業承継の視点で深読みします。
事業承継は中小企業診断士として注目すべき経営課題です。
白書でも繰り返し取り上げられており、2017年度版中小企業白書では「事業の承継」に122ページを、2019年版白書では「経営者の世代交代」に200ページを費やしています。
2019年版の概要には「事業承継や、廃業に伴う経営資源の引継ぎについて、特に引退する経営者に着目して分析する。具体的には、若い世代への事業承継が企業の業績にプラスの影響を与えること、事業承継や経営資源の引継ぎのためには早めの準備が必要であることなどを明らかにする。」と記述されています。
また、中小企業庁では円滑な事業承継を支援するため、「事業承継ガイドライン」を策定し、ホームページで公表しています。
内容のポイントの一つとして、事業承継の構成要素として「人(経営)・資産・知的資産」の三つを挙げ、これらは経営者が事業を通じて培ってきたものであり、準備期間を設けて計画的に次世代に円滑に引き継いでいくことが重要であるとしています。
さて、B社の状況はどうなっていたでしょうか?
B社は、「2年前に父親である社長が急死し、民間企業に勤めていた30歳代後半の長男が急きょ事業を承継することになり、8代目社長に就任」しました。
親子間承継ですから、経営権や事業用資産はスムーズに相続できたでしょう。
一方、知的資産の承継はどうでしょうか?
経営ノウハウや顧客情報などは「B社のビジネス手法は創業当時からほとんど変わっておらず」、7名の従業員のうち「家族従業員3名(母親と祖父母?)」ですから、突然の社長就任とはいえ、仕事に手馴れた家族から十分なサポートが得られたでしょう。
ここで危惧されるのは、本来であれば時間をかけて引き継ぐべき7代目社長の人脈を引き継ぐことができず、近隣の経営者達との交流や連携が手薄になっていることが想定できることです。
すなわち、「B社周辺にある他の業種の店々は、拡大する観光需要をバネに、このところ高収益を上げていると聞く。B社だけがこの需要を享受できていない状態」に至った原因であると類推することができるのではないでしょうか。
第4問の解答を考える際には、中小企業診断士としてB社の事業承継のスキームを把握し、「知的資産の中でも先代経営者が培ってきた近隣経営者との人脈が途切れていることが懸念されるため、エリア一体の街並み整備や地域ボランティアといった活動を行う商業地域の経営者層との関係を強化していくことが、X市の夜の活気を取り込むために必要な施策の第一歩になること」を踏まえたうえで助言したいですね。