読者の皆さま、こんにちは。
AAS 東京の渡邉と申します。
一応、毎回自己紹介をしておこうと思うのですが、
私は昨年から地元の岡山県にUターンし、家業の承継を見据えて
父親の経営する会社に勤務しております。
ブログとしては、皆さまが診断士試験を通じて学習されている知識が、実際の経営現場でどの様に活用されているかを中心にお伝えしてきたいと思っております。
さて、本日のテーマは「事業承継」です。
後継者不足で、黒字でも廃業せざるを得ないという会社が急増しており、
国としても事業承継支援が最重要課題となっています。
昨年の白書でも「事業承継」がテーマとして取り上げられていましたね。
今年の試験でも問われる可能性はありますので、受験生としてはおさえておきたいところだと思います。
さて、事業承継では、贈与・相続税対策なら税理士、株式移転や遺言等は弁護士の様に多数の専門家が
関わりますが、その中で中小企業診断士の役割って何なのでしょうか?
私が思うに、それは「知的資産の承継支援」です。これが事業承継では一番重要になります。
知的資産とは、会社の理念やノウハウ、人脈等のように会社に蓄積されている無形資源のことです。
無形であるが故にどこに何があるのか分かりにくく、経営者/後継者も「それを引き継ぐ」という意識に欠けることが多いようです。
会社が存続してきているからには「強み」や「弱み」があるはずで、それらを認識せずに経営者が交代してしまうと、経営が傾いてしまうリスクは高まります。
実際、私の両親は長年経営者をやっていますが、事業承継と言っても、「株式を移転するのに税金を低くおさえるのにはどうしたら良いかな」くらいしか頭に無かったようです。
後継者である私としては「〇年後に会社を譲る」と言われても不安でいっぱいでした。
お客様との信頼関係は続けていけるかな、従業員からの理解や協力はもらえるかな、クレームに上手く対処できるかな等、心配事のオンパレード。
父親にその不安を話しても、大体「そんなの大丈夫だろ」程度の答えで、何の解決にもなりませんでした。
そんな時に私が目にしたのが商工会の実施する事業承継支援サービス。
無料で専門家を派遣してくれ、個別の対応をしてくれるというものです。
早速申し込みをして、事業承継支援専門のコンサルタントの方に来て頂くことになりました。
そこでは、「お客様の引継ぎ」「従業員の引継ぎ」「ノウハウの引継ぎ」の様に、やるべきことを
整理してお話し頂きました。
一方的に説明するのではなく、社長に問いかけて考えさせる様な形式で面談が進み、
気づいたらやるべきことが整理されていて、私も感心しました。
これにより、現社長にも気づきが多かったようで、今後の引継ぎのスケジュールを自分から立てて
私に提示してくれました。
私としても大分気持ちが楽になり、これから会社を承継する自信がついてきました。
改めて、診断士に必要なのは、幅広い知識を持っておき、全体を俯瞰しながらやるべきことを理路整然とまとめていく能力なのだな、と感じました。
事業承継を行うにあたって、経営者と後継者のみで進めようとすると、何から手をつけて良いのかわからず、
「漏れ」や「抜け」が出たり、双方の意見が食い違ってなかなか上手く進まない、ということは大いにあります。
第3者が客観的にその企業の全体像を把握し、知的資産を後継者に確実に引き継いでいく、というのが最適な方法になるはずです。その第3者になるのは税理士でも弁護士でもなく、経営の専門家である中小企業診断士、ということになるのです。
そういう意味では2次試験の勉強というのは診断士になるためのうってつけのトレーニングなのかもしれませんね。「複雑な与件文を整理して全体像を俯瞰し、各論を述べていく」、まさに診断士に求められている能力だと思います。
私も正直、受験生時代は「こんな勉強意味あるのかな」と思って投げかけたこともあるので、勉強の辛さは良く分かりますが、受験生の皆さまは「これも診断士になるための良いトレーニング」と思って頑張って学習を進めてくださいね。
それでは今週はこの辺で。