みなさんこんにちは。2回目の登板となります「馬車の第五輪」です。
前回の投稿で、自分が決して最短距離で診断士試験合格を勝ちとったわけではなく、むしろ遠回りに遠回りを重ねて8回目の二次試験で合格したことを申し上げました。
その長い年月の間、なにもボーっと過ごしていた訳ではありません。
毎年毎年「次こそは」と臥薪嘗胆の思いの中、自分に足りないものは何か、合格するために何をすべきなのか、真剣に悩み、その対策を講じてきたのでした。
8年もありましたので、中には迷走とも思えるようなことも含め、多くの試行錯誤をしてきました。
短期間で効率的に合格する、という観点では結果的に失敗だらけの対策だったのかもしれませんが、そのおかげでオリジナルな経験が沢山できたともいえます。
「人は間違える時のみ個性的である」という誰が言ったかわからない言葉が好きで気に入っているのですが、遠回りしてきたからこそ個性的な診断士への道を歩んで来れたのではないでしょうか。
というわけで、こらから何回かのシリーズにわけて、「まちがいさがし」の「正解の方」では出会えなかった独自の経験・知見について、ご紹介をしていきたいと思います。
論理について
本日、その1つ目としてご紹介するのは、「論理」(認知含む)について独学で得た内容です。
もともと当然のようにストレート合格を目指していたにもかかわらず、連戦連敗(不合格)を重ねていたおり、
敗因分析をする中で、自分は設問・与件を読み答案を構成する「論理的な読解力・思考力」が決定的に不足しているではないか?
という仮説を立てました。
それ以来、読解力を高めるためと様々な書籍を読み、「論理」に関する学習を独学で続けてきました。
それでも論理に関する書籍は数多あり、途方もなく奥が深いため、その一端をかじったに過ぎないですが、影響を受けた内容のトピックスをご紹介したいと思います。
論理とは、「わけ」て「つなぐ」こと
中小企業診断士試験は論理的思考力を問われる試験である、とよく言われますが、
小学生に「ろんりって何?」と聞かれたら、皆さんはなんと答えますか?
これまでの学習を通じて、私は「わける」ことと「つなぐ」こと、と答えます。
そもそも論理という言葉自体がそのことを意味しているそうです。
娘が生まれ命名する時に熟読した「漢字字源辞典」(角川学芸出版)によりますと、
論・・・「言」偏に「侖」。「言」は言葉そのもの、「侖」は古代中国の竹簡をまるめることに由来し、つくりの上の「A」のような部分は「つなぐこと」下の「冊」は「まとめることを」意味するそうです。つまり言葉をまとめ、つなぐことです。
理・・・「王」偏に「里」。里は田と土からできており、田の中の畦道が井然として田を分離しているところからきているそうです。訓読みは「ことわり」ですよね。つまり言葉を(言葉で)分けることです。
畢竟論理とは、「言葉をつなぎつつ、言葉をわける」ことに他ならない。
この言説を知った時、なるほどと膝を打ったのをよく憶えています。
AASの基本解法の「切り口を設定する」・「因果で表現する」は、まさしくこのことだと思いますし、
事例Ⅲなどは、ゴチャゴチャした与件文を製品ごとに「分ける」ことができただけで高得点につながることもしばしばです。
クロスSWOT分析なども「わけて、つなぐ」そのままですし、アンゾフの成長戦略、PPM分析などを見ても、「論理の理の里」を連想してしまうようになりました。考えてみれば診断、助言ということそのものも中小企業を取り巻く環境、戦略、施策を「わけて、つなぐ」ことなのかもしれません。経営者の思いに寄り添うことはもちろん大切ですが、「論理」も大切にする診断士になりたいと強く思います。(ちなみに「侖」は訓読みで侖う(おもう)と読むそうです)
※実はこのパートで具体的な事例問題をもとに私がやっていた「わけて、つなぐ」考え方を説明しようと試みたのですが、大長編になりすぎて、かつわかりづらすぎたので割愛しました。機会があれば是非参考までにご紹介したいと思います。
事例Ⅰの与件文って、読めるのに、何の話かわからない
突然ですが次の文を読んで意味がわかりますか?
布が破れたので、干し草の山が重要であった。 (その理由は?)
ちょっとわからないですよね。
少し長いですが、次の文章はどうですか?
・・・・
新聞の方が雑誌よりいい。街中より海岸の方が場所としていい。最初は歩くより走る方がいい。何度もトライしなくてはならないだろう。ちょっとしたコツがいるが、つかむのは易しい。小さな子どもでも楽しめる。一度成功すると面倒は少ない。鳥が近づきすぎることはめったにない。ただ、雨はすぐしみ込む。多すぎる人がこれをいっせいにやると面倒がおきうる。ひとつについてかなりのスペースがいる。面倒がなければ、のどかなものである。石はアンカーがわりに使える。ゆるんでものがとれたりすると、それで終わりである。 (何の話?)
・・・・・
いかがでしょうか?
言葉としてわからない難しい単語や難解な文法は一つもありませんが、「何の話」かがわからない方が多いのではないでしょうか?
私は最初にこの文章を読んだ時、事例Ⅰの与件文の読後感のような既視感を感じました。眼光紙背に徹す意気込みで読んでも、さっぱりピンとこない、あの感じが。
答えをいいますね。
最初の文は、「パラシュート」
2番目の文章は、「凧を作って揚げる」ことについての文章でした。
どうでしょう?
何の話かわかりさえすれば、書いてある内容がすっきり理解できると思います。
不思議ですよね。
『わかったつもりー読解力がつかない本当の原因』という書籍に紹介されていた内容ですが、
「文脈」がわからなければ、何の話かわからない、と説明されています。
「パラシュート」や「凧」という文脈から、自分の持っている一連の知識を引き出し、部分の記述と関連づけて「わかる」ということです。
私は事例Ⅰでよくこのことが起こっていたと思っています。
たとえば平成28年度事例Ⅰの第2問(設問2)は、
「A社では、これまで、学校アルバム事業を中核に据えた機能別組織体制を採用していたが、複数の事業間で全社的に人材の流動性を確保する組織に改変した理由を、100字以内で述べよ」という設問でした。
上記の「パラシュート問題」「凧揚げ問題」に構造がよく似ていると思いませんか?
時間のある方は与件まで確認いただければと思いますが、「マトリクス組織」というワードは一切どこにも出てきません。
この言葉がひとことだけでも与件のどこかに書いてあれば、難易度がまったく違いますよね。
自力で「パラシュート」や「凧」にあたる「マトリクス組織」に辿り着かねばならない訳で、とても大変です。
ですが、このことを理解しているかどうかが大きな違いを生むのではないでしょうか。
つまり、診断士の事例問題では、「文脈」が直接表現されるキーワードがあえて隠されていることがあると知っていることが重要である、ということです。
社会人として日常目にする文章で、大切なキーワードがあえて隠されていることはまずないので、そのことを認識していないと与件分を読み終わった後に途方に暮れることになりかねません。
そして、「事例Ⅰは組織・人事をテーマにした事例である」「組織は戦略に従う」といった当たり前・前提ともいえる「文脈」を常に意識しておくことが本当に重要だと考えます。
・・・・・・
たった2つのトピックスしか紹介していないのに、字数がかなり多くなってしまいましたので、本日はこれまでにしたいと思います。毎度長文ですみません。
診断士独学「論理」シリーズ、まだまだネタはありますので、いつか続編をリリースしたいと思います。それではまた次回、お会いしましょう!
【出典、参考文献】
『まちがいさがし』(作詞:米津玄師)
『漢字字源辞典』(山田勝美・進藤英幸)角川学芸出版
『酒井の現代文ミラクルアイランド』(酒井敏行) 情況出版
『わかったつもりー読解力がつかない本当の原因』(西林克彦)光文社新書